福岡県下のある私立女子高校では、保護者に対し、職場見学への同行を推奨しているという。いったい、狙いは何なのか。進路指導担当になって5年という担当者に話を聞いた。
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バイト経験すらない学生が職場見学に行っても仕方がない
就職者の希望の生徒の傾向は?
「自宅から通える範囲」で仕事を探す生徒が多い。九州の他県と比べ、福岡県は県内の求人が豊富にある。今年度は25名程度の就職希望者がいるが、県外就職希望者はゼロだ。
東京、大阪に憧れるような生徒はいますか?
都会に出て新しい自分を見つけようといったアクティブな志向を持つ生徒は減っている。そもそも、東京、大阪の企業の待遇が特別いいわけではなく、モチベーションに繋がらない。
職場見学への保護者の参加を勧めているのですか?
はい。3年前から保護者に対し、できる限り生徒と一緒に行くように伝えています。昔は新聞紙がたまったら、八百屋に持っていき、1キロいくらと小銭を稼いだものです。そうした勤労経験もなく、当校は私立高校ということもあり、アルバイト経験がない生徒も多い。そんな生徒が一人で職場見学に行っても、企業の魅力や体質に気づくことは難しい。これでは高校生の高い離職率はいつまでも解決されません。
親の同伴を企業も歓迎。企業より深く知るキッカケに
保護者が同伴することで、期待できることは?
生徒の勤労意識が弱い分、保護者がそれを補い、職場見学が有意義なものになります。給与や年間休日などのわかりやすい待遇面だけではなく、保護者の同伴なら福利厚生などに関する質問も出るでしょう。企業をより深く知ることができます。
企業側は親の同伴をどう思っていますか?
総じて歓迎です。逆に「保護者の方はこられないのですか?」と聞かれるくらいです。保護者が間に入ることで、企業側も自分社のことを深く知ってもらうチャンスと考えています。例えば、同じ業界で給与だけ見れば高いA社と、待遇面では見劣りするB社で悩む学生がいました。B社は給与面ではA社に負けますが、若手の職人を育てていきたいという思いと教育体制がありました。生徒だけだと、ついついわかりやすい給与だけで決めがちですが、保護者と相談し、結果B社に決めました。
高卒就職情報WEB提供サービスのIDの付与は現在、教師と生徒にしか認められていませんが、保護者まで拡大すべきと考えますか?
WEB情報だけだと、保護者も待遇面に流されがちです。保護者だって、どういう企業があるのか知りません。我が子が勤める会社のことは知るべきです。少子化の時代。一緒になって生徒を一人前に育てていくという姿勢を持った企業を見つけることが重要です。生徒たちの勤労意識が未熟な分、親が職場見学に同行し、仕事への理解を深めることは、早期離職を防ぐ一つの方法だと思います。