高卒求職者たちに、自社の存在や魅力を伝えるため欠かせないのが求人票!しかし、せっかく頑張って作成したのに応募状況が芳しくないという企業もあれば、雇用に至ってもすぐに辞められてしまうという企業もあります。

それではいったいなぜ、そういった状況が発生するのでしょうか。
そこで改めて、正しい求人票の見方や、より効果的な書き方をお伝えします。
求人票には「何を」「どんなふうに」書けば良いのか知り、貴社の人材獲得に活かしてください!

高卒採用と求人票

近年の慢性的な人材不足もあって、高卒人材への注目が高まっています。しかし、高卒求人には独自のルールがあるなど、大学新卒や中途採用とは違った募集戦略も重要です。

中でも特徴的なのは、高卒人材は、高校の推薦や斡旋により就職活動を行うこと。そして、高校を介して採用を行う場合に必須となるのが、ハローワークへの求人票登録です。

企業側は、まずこの求人票を通して学校や生徒たちと接点を築いていきます。つまり、進路指導の先生方や高校生たちに「まずは自社を知ってもらう」ための、非常に大事な入口なのです。

高卒求人の見方

1)雇用・就業形態
分かりやすく言うと、雇用形態とは「雇われ方」のことです。大きく4種類に分けられます。

  • 正社員:雇用期間を定めずフルタイムで働く
  • 正社員以外:契約社員や嘱託社員など
  • 有期雇用派遣:人材派遣会社と雇用契約を結び、指定の期間に指定の企業で働く
  • 無期雇用派遣:同じ派遣でも期間が決まっておらず、派遣終了後も派遣会社との雇用契約が継続する

一方、就業形態とは「働き方」のこと。

  • 「派遣・請負でない」
  • 「派遣」
  • 派遣期間終了後に派遣先との合意のもと当該企業の社員となる「紹介予定派遣」
  • 労働力ではなく労働の成果物に対して報酬が支払われる「請負」の4種類です。

 2)職種・仕事の内容
採用後に初めて従事する、あるいは将来的に従事する可能性のある仕事の内容です。求職者(高校生)が最も気になる項目であるため、できるだけ分かりやすく、かつ詳しく記載しましょう。

 3)就業場所等
実際に働く場所のことです。人員配置の事情などで求人時に就業場所が確定していない場合は、その可能性がある工場名や支店名などを記載するとともに、決定方法や時期も補足してください。転勤の有無やマイカー通勤の可否、受動喫煙対策についても明記します。

 4)加入保険・福利厚生等
福利厚生とは、賃金以外の報酬のことです。各種保険や住宅手当などがこれに当たります。特に加入保険については、学校の先生方も重要チェック項目として(高校生に)アドバイスをしていますので、きちんと記載したいところ。なお、各種保険制度の概要は以下の通りです。

  • 雇用:雇用保険のこと。失業や休業などの際に支給され、従業員の生活を保障する
  • 労災:労災保険のこと。業務上の病気やケガに対して支払われる
  • 健康:健康保険のこと。業務外の病気やけがに対して支払われる
  • 厚生:厚生年金保険のこと。老齢(原則として65歳)になった、障害が残った、死亡した場合などに支払われる
  • 財形:「勤労者財産形成促進制度」のこと。国と企業が協力して従業員の財産形成を支援する。いわゆる“財形貯蓄”はその一種
  • 退職金共済:万が一、原資がない場合でも従業員に退職金を支払えるよう、社外で積み立てる制度

 5)賃金形態等
給与の支払い方法のこと。月単位で算定する「月給」、日単位の「日給」、時間単位の「時給」、年額を分割して支払う「年俸」が主な賃金形態です。日給と時給には、日払いや週払い、月払いなどの違いもあります。

なお、ここで言う「賃金」とは、名称や名目に関係なく、企業が従業員に支払うすべてのものを指します。給与や賞与、手当などの総称が「賃金」であって、「賃金=給与」ではないことに注意してください。

 6)賃金等
採用予定者に支払う賃金が確定しているか否かを記載します。既に決まっている場合は「確定」、未定の場合は「現行」です。「現行」の場合は、その年の高卒新卒採用者の賃金を参考として記載します。

 7)手当
営業手当、職務手当、資格手当、通勤手当や、固定残業手当(実際の労働時間に関係なく、あらかじめ一定時間の残業や休日労働などがあるものと見なし、定額を支払う制度)などの有無や金額を記載します。固定残業手当が発生する場合は、特記事項として「何時間分の残業がここに含まれるのか」を明示しましょう。

 8)月額
月あたりの賃金の総額です。基本給(a)+定期的に支払われる手当(b)+固定残業代(c)で算出します。

 9)賞与・昇給
ボーナスや給与アップについての記載です。制度の有無と前年度の実績金額を表記します。具体的な金額ではなく、賞与なら「〇カ月分」、昇給なら「〇%」(アップ率)と表記することもあります。

 10)就業時間
実際に何時から何時まで働くのかを示したものです。繁閑によって柔軟に労働時間が変わる変形労働時間制や、工場や病院などのように交替制勤務(シフト制)を採用している場合は、「変形」「交替制」などの文言を明示しておきます。

 11)時間外
早出や残業などの時間外労働がある場合は、時間外「あり」とし、おおよその時間(月あたり)を表示します。36協定の特別条項(繁忙期など特別な事情がある場合に限って、限度時間を超えて労働させることを認める労使協定の条項)がある場合も「あり」と表記します。なお、特別条項を定めないまま限度時間を超えた時間外労働を課すことは、労働基準法違反です。

 12)休日等
休日はいつなのか、有給休暇や年間休日(有給休暇を含まない)は何日あるのか、などを記載します。特に、週休二日制に関しては注意が必要です。完全週休二日の場合は「毎週」、隔週制の週休二日などは「その他」と表示します。週休二日制でない場合は「なし」です。

 13)応募・選考
求人に対する応募ルールをまとめたものです。受付期間、選考日、選考方法、選考場所、選考結果の通知方法、複数応募の可否などが該当します。中でも注意が必要なのが、「複数応募」についてでしょう。

高校生が学校推薦で応募できるのは原則1社のみと定めた独自ルール「一人一社制」が存在するためです。
多くの都道府県では、9月いっぱい、この一人一社制が効力を有します。もし不採用であった場合に限り、10月以降は複数企業の併願が可能になるのが一般的です。そのため、求人票においても「複数応募は可能か」「可能になるのはいつからか」を明記しておく必要があります。

 14)補足事項・求人条件に係る特記事項
企業の特徴、労働条件、福利厚生、手当、試用期間などに関する補足説明を行います。

 15)青少年雇用情報
平成27年施行の「若者雇用促進法」に基づき、以下の項目に関する情報を提供することが推奨、あるいは義務付けられています。ミスマッチによる早期離職解消などが狙いです。

  • 「募集・採用に関する情報」:過去3年間の新卒採用者数(男女別)、平均勤続年数、平均年齢など
  • 「職業能力開発及び向上に関する取組の実施状況」:従業員のスキルアップのために取り組んでいることなど
  • 「職場への定着の促進に関する取組の実施状況」:時間外労働の月平均、有給休暇の取得実績、育児休暇の取得者数、役員や管理職における女性の割合など

良い高卒求人票作成の手順・ポイント

1) 作成する際の手順
① 求める人物像を明確にする
まずは、求める人物像を明確にしましょう。能力・知識・経験・性格などについて、それぞれ「不可欠なもの」「あると嬉しいもの」「不要な(自社に合わない)もの」に分けて書き出してみると、整理しやすくなります。この際、単に「明るい方」といった抽象的な条件だけでなく、例えば所属していた部活や趣味なども含めた「個人」をイメージするのも効果的です。

② 必要条件の整理
次に、上記「求人票の見方」を参考にしつつ、記載する必要条件を整理してください。単にデータを羅列するのではなく、可能な限り自社のアピールポイントを付け加えることも忘れずに。またこの際、最初に設定した求める人物像をイメージして相手の視点に立ち、「この方なら、どんな条件やどんな表現を魅力的だと感じるだろう?」と想像しながら書くのがコツ。「みなさん」ではなく「あなた」という個人に向けてメッセージを送るイメージです。

 2)作成する際のポイント
求人票は一定のフォーマットであるがゆえに作成しやすい半面、他社と差別化しにくいというデメリットも存在します。文字ばかりの情報であるため、どんな会社・仕事なのかイメージさせにくい部分もあるでしょう。

加えて高卒の求職者たちは、まだ社会経験のない若者です。進路指導の先生方も、一般企業(の就職活動)を経験されていない方が少なくありません。
そのため大事なのは、慣例的な表現や専門用語は避け、できるだけ彼らが「分かりやすい言葉で」「具体的に」伝えることです。

例えばひとことで「営業」と言っても、新規開拓なのか、ルート営業なのかで業務もまったく違いますよね。そもそも高校生は「ルート営業」が何なのか分からないかもしれません。それなら「得意先を回って我が社の商品をご紹介する営業」としたほうが伝わります。定型の誌面で限られた文字数であるからこそ、こうしたほんの少しのホスピタリティの差が、求人力の差となって表れるのです。

まとめ

求人票は、言わば私たち企業と高校生を結ぶ最初の接点。しかし、せっかく入社してくれたのに「思っていたのと違った」となっては、お互いにとって不幸です。自社の魅力をアピールしつつ、かつ誤解なく伝わることが大切になってきます。

そのためには、やはり高卒求職者たちが何を知りたいと思っているのかを理解し、その立場で考えながら求人票を作成することがポイント。ラブレターやお見合い用のプロフィールを書くような気持ちで作成しましょう! また、求人票だけでは伝えきれない魅力を伝えるために、写真や動画などの掲載が可能な「ハリケンナビ」を是非ご活用ください。