少子化による若年層の採用難化から、高卒採用のメリットを見直す企業が増加中です。そこで今回、「これから高卒採用に力を入れたい!」という企業の担当者さん向けに、高卒採用の基本から一連の流れ、コツまで、分かりやすく解説していきたいと思います。
高卒採用とは?
高卒採用でまず気を付けたいのは、独自のルールや傾向があること。そのため、大学新卒や中途採用と同じやり方ではうまくいきません。さっそく、基本的なルールや仕組みを把握することから始めてみましょう!
高卒採用の独自ルール
高卒採用を知る上で、決して欠かせない大前提があります。それは、求職者たちがまだ高校生であること、そして彼らの本分が学業であること。高卒採用にはいくつかのルールがありますが、それらはすべて、この前提のうえに成り立っているのです。高校生を守る観点で行政・学校組織・主要経済団体が連携して定めたもので、「三者間ルール」とも呼ばれます。
具体的なルールや傾向として挙げられるのは、後述する「一人一社制」のほか、「ハローワークへの求人票登録」、「生徒への直接連絡の禁止」、「学校による高校生の斡旋」など。また慣習的なものとして、企業が指定校求人をする場合に、指定できる高校の数を募集人員の3倍までとする「3倍ルール」が根強い地域もあるので、確認しておきたいところです。
一人一社制
高卒採用ルールの中でも極めて特徴的なのが「一人一社制」でしょう。文字通り、高校生が応募できるのは原則として一人一社と定めたルールです。
学業に影響が出ないよう就活の負担を軽減することが目的で、上述の学校推薦と指定校求人を前提としているため、内定率が高いこともメリットと言えます。
ちなみに、令和4年度における高校生の就職内定率は99.3%。非常に高い数値を示していますが、これも一人一社制の安定感が寄与していると言えそうです。
もちろん、必ず採用に至るわけではありません。残念ながら不採用だった高校生は、10月ごろから始まる二次募集へと回り、ここでは複数の企業に応募することができます(応募できる数などは地域により異なる)。高校や大学の専願推薦入試とよく似た運用だと考えると分かりやすいかもしれません。
参照:厚生労働省 令和4年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」取りまとめ
採用スケジュール
基本的な流れ
高卒採用の全体的な流れをご紹介しましょう。まずは三者間ルールに基づき、ハローワークに求人票を提出するところから始まります。これが6月ですので、募集条件の整理や採用計画の策定、求人票の作成などは、4~5月までに進めておくことが大事です。
7月1日からは求人情報が公開され、企業側の高校訪問(求職者や先生方へのアピール)、高校生の職場見学などが可能になります。いわゆる就職活動・採用活動の「解禁日」が7月1日だと思ってください。
9月からは実際に高校生のエントリーが始まり、おおむね10月までには選考と内定を終えます。ここまでに希望の人材確保や採用予定人数に至らなかった場合、二次募集を実施するという流れです。
2024年度採用の選考スケジュール
2024年度採用(2024年3月卒)の選考スケジュールは以下の通りです。この日程は毎年、前述の三者による話し合いのもと決定していますが、地域によって多少の違いがあります。
・6月1日(木):ハローワークが求人申込書の受付を開始(求職者が提出)
・6月中:求人票提出
・7月1日(土):採用活動解禁。企業による高校への求人票送付、訪問、高校生による応募前職場見学がスタート
・9月5日(火):応募受付開始
・9月16日(土):選考および採用内定の開始
・10月以降:二次募集開始
ここで目を引くのは、応募の受付開始(9月5日)から選考・内定までが1カ月弱と、非常にタイトなスケジュールであることです。短期決戦になりますが、実質上、その前段階で既にある程度の結果が出ていると言っても過言ではありません。8月までの間にどれだけ自社をアピールできたかが、勝負の分かれ道です。
二次募集について
おおむね10月以降は二次募集です。一次募集で思ったような結果が出なかった場合、9月末ごろから再び学校訪問などのアプローチを再開すると良いでしょう。一人一社制のような特定のルールもなくなり、高校生はより幅広い選択肢から進路を選択します。
確かに、一次募集と比べると求職者の絶対数が少なくなるのは事実です。「もう良い人材は残っていないのでは?」と不安になるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。
例えば進学や公務員志望など別の進路を選択していた高校生が、このタイミングで方向転換することも少なくないからです。非常に高い能力を持つ“掘り出しもの”の人材が見つかることもあるため、二次募集時のアプローチもしっかり力を入れて、自社をアピールしていくことが大事です。
高卒人材採用に向けて必要な準備とは?
求人票提出が6月、採用活動解禁が7月、採用活動は9月でも、直前になって慌ただしく対応しているようでは良い採用は行えません。年明けごろからを目途に、ゆとりと計画性を持って準備を始める必要があります。むしろこの準備段階の動きこそ、最も重要なのです。
1月~3月 次年度の採用目標・採用戦略の策定
まずはどんな人材がどれくらい欲しいのか、どうやって人材確保をしていくのか、全体的な戦略を練ります。それに基づき、合同企業説明会や学校主催のイベントなどへの出展計画を立てるほか、必要であればHPや採用サイト、パンフレットなどの採用ツールの見直しも行いましょう。
また、高校生もこの時期くらいから、進路について三者面談を開始しています。ネット検索で情報を集め始める時期でもありますので、特にHPでの情報発信を積極的に行い、“種まき”しておくと効果的です。
4月~5月 学校訪問・イベントへの参加等による先生へのアプローチ
高卒採用において、学校訪問は欠かせません。高校生の就活における先生方の影響力はとても強く、生徒に自社を勧めてもらうためには、先生方との信頼関係構築が必須だからです。就職するのは高校生でも、まずは先生方にどれだけアピールできるかが重要だと思っておきましょう。
求人票を持参しての訪問は7月の解禁日以降ですが、この時期から学校訪問自体は可能です。具体的な採用の話はできなくても、今年の就職希望者の人数や希望の業界・職種などをヒヤリングするのは問題ありませんので、積極的に訪問を行ってください。
もちろんこのとき、自社のアピールも忘れずに。給与や福利厚生など具体的な採用情報のアピールは解禁日以降とし、ここでは業界のことや将来性などを伝えることに重点を置きます。先生方は民間企業への就活・就職経験がない場合も多いので、分かりやすい説明を心がけましょう。
また、合同企業説明会などのイベントは、先生方だけでなく高校生と接点を持てる大きなチャンス。こうしたチャンネルも活用し、解禁日までにできるだけ自社へのエンゲージメント(認知度や愛着心など)を育んでおくことが重要です。
5月~6月 求人票の作成・受理申請
6月1日から、ハローワークへの求人票提出が可能になります。求人票はフォーマットが決まっており、掲載できる情報量もそこまで多くないことから「すぐに作れる」と思われがちですが、その考えは改めたほうが良いでしょう。
なぜなら、決まった誌面で情報量も少ないからこそ、その条件内で何をどう伝えるかがカギになるからです。1~3月に立てた採用計画をもとに、しっかり吟味しながら求人票を作ってください。遅くとも5月中には完成させ、6月になると同時に提出するぐらいのスケジュール感で臨むのがベストです。
【ここが重要!】採用成功のポイントとは?
高卒に限らず、採用活動の成功のカギは、いかに相思相愛になれるかです。そのためには「どんな人材を求めているのか」と「自社はどんな会社なのか」の2点について、高校生と私たちの間に認識の齟齬がないことが重要になります。
採用の目的や求める人物像を明確にする
毎年のように採用活動を行っていると、「なぜ採用するのか」という根源的な部分を忘れがちです。単に人員が足りないからとか、恒例だからではありません。自社の強みや弱み、中長期も含めたビジョンや事業展開の中で、今回採用しようとする人材たちにどんな活躍を望んでいるのか、自社のどんなピースを埋めて欲しいのか、改めて具体的に言葉にしてみましょう。
それができたら、そのために必要な人物像を明確にしていきます。このとき意識すると良いのが「ペルソナ」です。求める人物像をできるだけ具体的にしたもので、例えば「○○の資格を持っている」といった条件的なものだけでなく、「少々のことではへこたれない」「下支えするタイプのリーダーシップを持っている」などの人間性や価値観も踏まえて設定します。理想の新入社員キャラクターを一人創造するイメージですね。
自社を深く理解してもらう機会を増やす
ペルソナ設定が重要な理由は、求める人材を明確にするためでもありますが、高校生にアピールしやすくなるという大きなメリットもあります。
例えば求人票を作成するときなどに、「この人物なら、こういう表現のほうが伝わりやすいだろう」「こういう部分に興味を持ってくれそうだ」など、ターゲットを明確にしたアピールがしやすいのです。「みなさん」ではなく「あなた」に向けてメッセージを届ける感覚です。
もちろん求人票以外にも、自社を深く理解してもらう機会をたくさん作ることは欠かせません。そのためにも、前述した学校訪問、イベント参加、応募前職場見学の実施や、採用ツールや媒体の充実が必要なのです。会社紹介動画を作成し、Youtubeなどにアップする企業も増えてきました。
まとめ
ただやみくもに「社員募集!」では、良い採用はできないものです。さらに、独自のルールや慣習があるのが高卒採用。まずはそれを理解し、適切な採用活動を行っていくことが成功のカギです。
また、どれだけ自社が良い会社であっても「そんな良い会社がここにあるよ!」と知ってもらわないことには、存在していないのと同じ。加えて決められたルールと、限られた接点や媒体の中だけで自社をアピールしていくのは大変です。
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