高卒採用には、大学新卒採用や中途採用とは異なる傾向が存在します。大企業と中小企業でも戦略は変わってくるでしょう。

そのため、それらの違いを見据えて適切な対策を講じられるかが、採用成功のカギです。まずは高卒採用の基本を押さえつつ、採用力強化のポイントを探ってみましょう!

高卒採用のキホン

高卒採用に取り組むときにまず知っておきたいのが、独自の流れとルールです。求職者といっても、まだ高校生。そのため、彼らを「守る」視点で制度設計されていることが特徴です。

高卒採用の基本フローとスケジュール

高卒採用のスケジュール

高卒採用は、ハローワークを介して行うのが原則です。直接的に高校生や保護者などとコンタクトを取ることは禁止されています。前述のように高校生を守るためで、基本的には以下のようなステップになります。

STEP1.ハローワークが主催する「高卒求人説明会」に参加 4~5月

STEP2.ハローワークに求人の申込(求人票の作成および提出) 6月

STEP3.ハローワークが求人票を発行。受領し、学校へ提出 7月

STEP4.応募前職場見学の開催(実施は任意) 7月

STEP5.高校(求職者)から応募書類を受領 9月

STEP6.採用試験の日程等を伝達し、実施 9月

STEP7.書面で結果を通知する 9月

STEP8.二次募集(採用予定人数に満たなかった場合) 10月

スケジュール上の注意事項

上記「STEP1」(4~5月ごろ)を見据え、求める人材像や採用人数の設定、採用ツールの見直し・作成などは、3月までに終わらせるのが理想。加えて、「STEP1」と並行して学校訪問や採用イベントへの参加などを実施し、進路担当の先生方との接点を作っておくのもポイントです。

また「STEP」5以降は、ハローワークに対し定期的に採用状況を報告する必要があります。あらかじめ定めた募集人員を充足するまで「求人は継続している」という扱いであり、採用予定人数を下回る状態で勝手に求人を中止することはできません。「若干名」といった、お茶を濁すような表現も不可です。やむを得ず中止する場合は、ハローワークや学校への届け出が必要ですので注意してください。

なお、「STEP5」~「STEP7」までのスケジュールが非常にタイトです。実質上、エントリーから採用決定までを迅速かつ粛々と進めていくので精いっぱいになりますので、自社のアピールなどは8月までに済ませておきましょう。

高卒採用の独自のルール

一人一社制

上記「STEP8」の二次募集が始まるまで、一人の高校生が応募できる企業は1社のみと定めたルールがあります。高卒採用は、学校が企業に生徒を「推薦」する形でエントリーするのが基本。このとき、企業側は自社への単願を求めると同時に、学校側も他社への推薦を行わないという制度が「一人一社制」です。

生徒との直接的な連絡の禁止

求職者である高校生と私たち企業側は、直接的に連絡を取り合ってはいけません。卒業式を終えるまで、コンタクトはすべて学校を経由します。

書類のみでの選考の禁止

高卒採用において、書類のみで採否を決定することは原則として禁止されています。必ず面接等を行った上で判定をしてください。

提出書類は求職者本人が作成する「履歴書」と、学校が作成する「調査書」がありますが、書式が統一された指定の用紙を使う必要があります。企業側で独自に別の書類の提出を課すことも禁止です。

高卒採用戦線、中小企業が苦戦ぎみ

令和5年3月に高校を卒業した新卒者の求人倍率は、過去最高の3.49倍。つまり求職者1に対して、3.49の求人があるということであり、空前の売り手市場にあると言えます。そんな中、苦戦を強いられがちなのが中小企業です。何が原因なのでしょうか。

大企業と比べた際の知名度

中小企業は、知名度の点でどうしても大企業に遅れをとりがちです。高校生も、先生方も、自分が名前を知っている企業に目がいくのは仕方ありません。仮に業務内容や待遇がまったく同じ条件だとしたら、大企業が選ばれやすくなるのは事実でしょう。

また近年は、就職先の意思決定において保護者の意向も強くなっていると言われます。大学新卒ともなれば本人の意思に任せることも多いでしょうが、いかんせんまだ高校生。親心ゆえに、大企業が持つ安定性を求め、我が子にそれを勧めたくなるのは理解できる心情です。

待遇・福利厚生

待遇(給与など)や福利厚生においても、大企業と比較されると苦しい面はあるでしょう。意外に思われるかもしれませんが、高卒で大企業に就職するパターンと、大卒で中小企業に就職するパターンでは、前者のほうが生涯賃金が高くなるという統計も出ており見逃せません。

住宅関連、健康医療関連、育児介護関連、あるいは自己啓発にかかる費用など、大企業ではさまざまな手当が充実しています。同じ手当でも、大企業のほうが支給額が高くなりがちです。結果として可処分所得も上昇するため金銭的余裕が生まれやすく、求職者はそこに魅力を感じます。

採用に投じられる予算・人員が少ない

採用活動に投入できる予算もマンパワーも、大企業が有利なのは否めません。例えば採用のためのパンフレットやWEBサイトだけでも制作費が必要ですし、採用活動を担当する従業員の人件費も金銭コストと見なすことができます。限られた資源の中で、自社にできることをバランスよく実行していくのが現実的な対応策です。

専門的な採用ノウハウの不足

そもそも「人事部」がなく、役員クラスや総務系の部署が採用業務を兼務している中小企業も少なくないでしょう。こうした場合、専門性を欠いた行き当たりばったりの採用活動になることがあります。本業の合間を縫って採用業務をするしかなく、対応が遅れて優秀な人材を取り逃すことも。採用に関するノウハウを社内でストックしたり、改善を重ねたりすることも難しくなります。

中小企業も、採用力を高めることは十分に可能!

では、中小企業は採用で大企業に勝てないのでしょうか。いえ、そんなことはありません。工夫次第でいかようにでも採用力を高めることはできます。確かに資本やマンパワーは大企業の魅力ですが、それらに頼らずともできることや、中小企業だからこその魅力もあるのです。

教育・サポート制度を充実させる

高校生たちは、その会社で自分がどのように成長できるのか、未来に夢を描いているものです。その向上心に応えられると伝えるためにも、教育・育成や、サポートの制度を充実させていきましょう。

しかし中小企業の人材育成は、当人の自主性に委ねられがちな(委ねざるを得ない)部分もあります。だからこそ逆に、自主性を発揮しやすい環境を作れば良いのです。例えば質問しやすい、学びやすい職場環境を整えるだけでも、企業の魅力は大きく高まります。

また、OJTと称して「とりあえずやれ」だけでは単なる放任も同然です。体系だった指導体制と、振り返り・改善の場を設けることは欠かせません。昔ながらの「仕事は見て盗め」を全否定するものではありませんが、現代の若者の価値観には合わなくなっているのは事実です。「我が社は、あなたを大切に育てますよ」という姿勢をきちんと示すことで、安心感を伝えましょう。

長く働ける環境を整える

残業が少ない

残業の少なさはそれだけで魅力になります。現代の若者の職業観において、余暇は非常に大事です。内閣府が16~19歳を対象に行った調査「特集 就労等に関する若者の意識」によると、63.7%が「仕事よりもプライベート重視」と答えたことが分かっています。良し悪しは別として「残業もバリバリこなして、がっつり稼ぐぞ!」という考え方は少数派です。

人間関係が良好

就職後3年以内の高卒者の離職率は35.9%。大卒と比べて高い傾向にあり、高卒採用の大きな課題の一つとなっています。また別の調査では、離職理由はダントツで「人間関係」であることも分かりました。職場の良好な人間関係は、定着率を高めるにおいて欠かせない要素です。

地域密着

近年の若者を語る上で、大きなキーワードになるのが「地元志向」です。大都会への憧れは昔ほど強くありません。いわゆる“マイルドヤンキー”と呼ばれる層が増えたのもこの世代で、地元の友人や家族などとの繋がりを重視し、生まれ育った地域に根ざして暮らし続けることに価値を感じています。そのため、現在の生活を維持できる地元の中小企業は安心感があるのです。求人票に「地域密着」と盛り込むだけでも、魅力的に映るでしょう。

採用費を増やし、自社の認知度を高める

もともと名前を知られている大企業と違い、中小企業はまず「自社の存在を知ってもらう」ことから始めなければいけません。

そのためには、高卒求職者たちと自社の情報との接点を持ちやすくして、認知度を高めることが大事です。例えば自社のHP、採用専用サイト、パンフレット等の充実はもちろん、SNSや動画による発信も効果的でしょう。

もちろんそれらには、相応の費用がかかります。しかし採用にかかる費用は、コストではなく投資であると考えるべきです。採用に費用を投じた分、良い人材を確保でき、彼らの活躍によって自社が発展するというサイクルで発想してください。

逆に考えれば、ここを出し惜しみすると、結果的にはその逆サイクルになるということです。投じられる費用にも限界はあると思いますが、可能な範囲内で採用への積極投資を行う視点を持ちましょう。

まとめ

ブランド力で勝負できるのが大企業なら、中小企業の武器は小回りの良さであると言えます。例えば大企業では、採用のための広報媒体を作ったり、研修制度などを見直したりというだけでも、何段階もの稟議や承認が必要になりがちです。またブランド力が強いからこそ、それを守るために思い切った手を打ちにくいという側面もあるでしょう。

しかしその点、中小企業は即断即決がしやすくスピード感が違います。尖ったアイデアも実行しやすいです。あとは、いかにその取を高校生たちに知ってもらうことができるか。ハリケンナビでは、自社媒体や独自の人的ネットワークなど、さまざまなチャンネルをご用意しております。一人でも多くの人材に貴社の魅力を届けるためにも、是非ハリケンナビをご活用ください。