高校生の採用活動で欠かせないのが「高校訪問」。企業の担当者が学校を訪れ、就職を希望する生徒が自社に興味を持ってくれるようアピールを行います。しかしなんとなくルーチンで学校を回りながら「我が社をよろしく」だけでは成果に繋がりません。

そこで今回は、高校訪問の基本に立ち返りながら、効果的なアプローチについて考えてみましょう!

高校訪問とは?

どれだけ自社が魅力的でも、それが学校や求職者に伝わらなければ意味がありません。高校生採用の成否を大きく左右する活動ですので、正しく情報を把握し、効果的な高校訪問を実践しましょう!

高校訪問、基本の「き」

高卒採用には独自のルールや文化があるため、これを正しく押さえておくことが欠かせません。とりわけ高校訪問において重要となるのが「生徒と直接コンタクトを取ってはいけない」というルールです。連絡などはすべて先生を介して行うため、生徒に直接「ぜひ我が社へ!」などとアピールすることはできないのです。生徒と直接的に接することができないからこそ、その中でどう動くべきかという発想がすべての前提になります。

高校訪問の目的

高校訪問の目的は当然ながら自社のアピールなのですが、上述のように生徒に直接コンタクトすることはできません。就職を希望する生徒の希望や適性などをふまえつつ、進路指導の先生方が「こんな会社があるよ」と紹介する形が多くなります。つまり、アピールする対象は生徒ではなく、まず先生なのです。

また、自社の“売り込み”と言うよりは、先生方と関係性を構築する場だと考えると良いでしょう。もちろん自社の魅力を伝えることは大切なのですが、それだけを押し売りしていてはいけません。先生方にとって、企業側の担当者への信頼感は、企業への信頼感そのもの。担当者個人レベルで信頼関係を築く、高校へのルート営業だという意識で臨みましょう。

訪問時期やスケジュール

企業が高校に対して求人活動を行えるようになる「解禁日」は、7月1日が基本です。この日以降、学校に求人票を持参(送付)できるようになり、具体的なリクルーティング活動が始まります。

ただ、具体的な採用活動さえしなければ、高校訪問自体は解禁日前に行っても問題ありません。むしろ積極的に訪問すべきです。もう少し細かく言うと、解禁日前と解禁日以降でそれぞれ目的を分けて訪問すると良いでしょう。

まず、解禁日前の訪問では情報収集と信頼関係構築を主眼に置いてください。就職希望者の数や希望業界・職種などの傾向を尋ねつつ、こちら側も自社の業界傾向(安定性や将来性など)を情報提供できると良いですね。そして解禁日以降の訪問では、自社の具体的な魅力や採用情報・イベント情報(職場見学等)を伝えるなど、「採る」ための直接的行動を起こしていくイメージです。

高校訪問を行うメリット・デメリットについて

基本的に高校訪問は積極的に行うべきですが、やり方を間違えるとかえって負担が大きくなることがあります。コスト面なども含めて合理的に判断し、効率の悪い訪問にならないように注意しましょう。

高校訪問のメリット

学校側により深く自社を知ってもらえる

先生方はやはり教え子たちがかわいいものです。生徒が自分らしくいきいきと働ける会社を紹介してあげたいと強く思っています。そのためには、やはりどれだけ自分がその企業のことをよく知っていて、自信を持って紹介できるかは重要な要素です。

しかし先生方も、学校から紹介する企業の詳細を熟知しているわけではありません。求人票などの限られた資料情報しか持っていないのが普通です。ネットなどを通して自分でいろいろリサーチされる熱心な先生方もいらっしゃいますが、すべてを調べられるほどの時間的余裕もないでしょう。

したがって高校訪問は、より深く自社を知っていただくための絶好の機会なのです。企業理念や今後のビジョン、働き方、やりがい、他社との違いなどをしっかり伝えましょう。資料では、社内の様子を写真や動画にしたものなど、視覚的に理解できるものをお渡しできるとより伝わりやすくなります。

先生との信頼関係性を築ける

上述したように、訪問することで先生方との信頼関係を築けることは大きなメリットと言えます。信頼できる担当者がいる信頼できる会社だから、安心して生徒を送り出せるのです。

しかし当然ながら、訪問するだけで信頼関係が構築されるわけではありません。先生方は一般企業での就業経験がない方が多いです。ましてや、自身が高卒で就活をした経験がある方などほとんどいないでしょう。したがって、生徒に何か教えてあげたくても、分からないことも多いのです。

そうした先生方のニーズや不安に応え、業界の情報や地域経済の動向などをお伝えできると非常に喜ばれます。先生方に貢献しようとする姿勢や行動が信頼を生むのです。自社のアピールばかりに終始しないよう、気を付けたいところですね。

連続性や蓄積性をもってアピールできる

しっかりと信頼関係が築けていれば、万が一その年の採用に繋がらなくても、次年度以降にも定期的に高校生を紹介してくださる可能性も高まります。

また、最初は自社のことも丁寧に説明しなくてはいけませんが、先生と関係性を築き、自社への理解を深めることができれば、翌年以降にまた同じ説明を繰り返す必要がなくなります。そのぶん、新しい取り組みを紹介できますし、さらに深い話もできるようになるでしょう。過去にその高校から入社した社員の現状などを伝えるのも良いと思います。中長期的な視点が大切です。

高校訪問のデメリット

準備に時間とコストがかかる

高校訪問には、相応にコストもかかります。交通費や郵送費、資料の作成費などもありますが、意識したほうが良いのは「時間コスト」です。資料を準備し、訪れる学校を選んで綿密にスケジューリングし、アポイントを取り、実際に訪問し……それだけの時間と人件費を発生させてまで訪問すべきなのかは考える必要があります。

地元の高校を片っ端から訪れていてはキリがありません。訪問する時期や、重点的に訪問すべき学校の選定などは綿密に行うべきです。一概にカテゴライズすることはできませんが、製造業であれば理系・工業系の高校を、小売業であれば商業系や普通科を……など、自社業界や業種との親和性が高そうな学校を中心にリストアップし、効率的で合理的な訪問を心がけてください。

採用実績のある企業が学校側に選ばれやすいため、新規参入が難しい

学校(先生)と信頼関係を築くことができれば、複数年にまたがった継続的な採用活動に繋げることが可能です。先生方も、自校からの採用実績がある企業は安心できる上、「先輩もここで働いているよ」と勧めやすくなります。

一方で、それを他社の立場で考えれば、新規参入が難しいという側面を持ちます。一般的な商取引にも言えることですが、学校としても既に相応の採用実績や強い関係性を構築できている企業のほうが、安心できるのは当然でしょう。訪問しても、あまりまともに取り合ってもらえない場合もあるようです。

しかし、すぐに結果には繋がらなくても、コツコツと訪問を続けることで人間関係ができていくこともよくあります。このあたりも、重点的に訪問する高校とそうでない高校をしっかり選別し、判断することが大切です。

高校訪問の事前準備

高校訪問は単なる「顔繋ぎ」ではありません。1校につき複数回訪問をすることも多いですから、それぞれの訪問における目的やゴールを明確にし、それに応じた準備を抜かりなく行いましょう。具体的には、学校の選定、資料作り、アポイントになります。

訪問高校の選定

高校は学科で大きく分けると、普通科、専門学科、総合学科の3種類です。一般教科を中心に幅広く学ぶのが普通科、商業・工業・農業・理数などの専門教育を行うのが専門学科、両者の特徴を併せ持っているのが総合学科だと考えてください。これに加えて定時制や通信制高校もあります。この中から、自社の業種や募集したい職種を鑑み、該当する生徒が多そうな高校を選んでいきます。

ところで普通科は「浅く広く学ぶ」というイメージがあり、それよりも専門技術を学んだ高校生が欲しいと思われるかもしれません。しかし近年、文科省は普通科の大改革を進めており、特色ある学びを行う普通科高校を次々と増やしています。学びのテーマは例えば地域活性、SDGs、さらには宇宙開発に取り組む学校もあります。

現在の日本では高校生の7割が普通科高校に通っています。まさに宝の山です。「専門性が低い」と、先入観だけで判断するのはもったいないと言えるでしょう。

自社の魅力を知ってもらえるような資料づくり

訪問時に自社の魅力を伝えられるよう、事前に資料を用意しておきましょう。求人票のみでは魅力は伝わりにくいですし、高校訪問を行うのは自社だけではありません。他社との競争でもあることを忘れないようにしたいところです。

準備する資料は企業パンフレット、採用動画、職場見学の案内資料、自社の商品など。この際、パンフレットは通常のものとは別に「採用専用」の冊子を作ることが望ましいです。一般の企業パンフレットは取引先などに向けたものであり、そもそもターゲットが異なります。それを読んだ高校生が「ここで働いてみたい!」と思ってもらえるよう、コンテンツを構成していくことが大切です。

動画も同様で、代表や先輩社員のメッセージ、オフィスや現場の様子、1日のスケジュールなどを分かりやすくまとめると良いでしょう。ただし、力を入れすぎて長い動画を作ってもあまり見てもらえません。1~2分程度の短いものにするのがポイントです。

また、アピール資料は「高校生目線」で作ることを意識してください。窓口となるのは先生ですが、働くのは生徒たちです。高校生が魅力を感じるような見せ方をすることが大切です。

アポイントメント

学校の先生方はとても忙しいです。アポイントメントを取らず飛び込みでの訪問はマナーとしても避けたほうが良いでしょう。ではアポイントメントを取る場合、時期や時間はいつごろがベターなのでしょうか。

まず、アポイントメントの対象となるのは進路指導部長、進路指導主事、あるいは進路指導主任の立場にいらっしゃる先生です。地域や学校によって名称は異なりますが、基本的には同じと考えて問題ありません。電話をかける場合は全日制の高校であれば10時~11時ごろ定時制であれば14時~16時ごろが比較的学校の迷惑になりにくく、繋がりやすいと言われます。

時期にもよりますが、訪問の目的(求人票や資料を持参したい、今年の就職希望者の状況などをヒアリングさせてほしい、など)も事前に伝えておくのがベストです。先方も分かりやすいですし、資料等の準備をして待ってくださっていることもあります。

高校訪問の際のポイント

資料を準備し、アポイントが取れたらいよいよ実際の訪問です。先生方も暇ではありませんし、私たち企業側も無駄に時間をかけすぎるのは得策ではありません。このときどんなことを意識し、どんな話をするのが効果的なのでしょうか。

誰が訪問する?

企業側の訪問者は、基本的には人事部の責任者であることが多くなります。この際、もし同行が可能であれば社長や若手社員(高卒採用者)も一緒に来てもらうと良いでしょう。

中小企業であれば社長が人事担当者を兼ねていることも多いですが、社長が直接訪問することは熱意の表れとして受け止めてもらいやすくなります。若手社員ならよりリアルで高校生目線に近い形で仕事の魅力を語ってくれるでしょう。その高校の卒業生であればさらにベターですね。

ただし、大人数で訪問するのは迷惑になる可能性があります。せめて2名程度にとどめておきましょう。

何を話す?

自社のアピールをすることが大前提ですが、演説のように長々と語っても先生方の印象には残りにくいです。自社の強みや魅力は「これと、これと、これ!」といった具合に、分かりやすく端的に示せるのが良いですね。このとき、資料もそれを前提とした作りにしておくとさらに分かりやすくなります。

解禁日以降の訪問であれば、今後のイベント(説明会や職場見学)のスケジュール、参加申し込みの方法なども忘れず伝えてください。

その他、求める人材像を具体的に伝えることも大切です。「こんな生徒さんが欲しい」という企業側の目線よりも「こんな生徒さんなら我が社にピッタリです!」と、相手目線で伝えるほうが共感度も高くなります。

まとめ

繰り返しになりますが、高校訪問は「先生」に対して行うものです。自社を生徒に紹介してもらえるかどうかは、まず先生のフィルターを通過できるかどうかにかかっています。そのため、プレゼンテーションやアポイントも、先生方の印象に残ることを第1ステップと考えてください。複数回の訪問で、地道に関係性を築くことも大切です。

一方で、当事者である高校生のことを忘れてはいけません。結局は先生方も、生徒たちの幸せを願って進路指導をしているのです。自社で働くことのメリットをしっかりと伝えましょう。

ハリケンナビでは、パンフレットや動画制作のサポートはもちろん、オンラインによる面接や職場見学のサポートも行っております。高校訪問と合わせて、ぜひご活用ください。