高卒採用において、求職者と企業がお互いを知る絶好の機会となるのが「応募前職場見学」。ここが採用の成否を分ける大きなカギにもなり得ますので、その意義や適切なアプローチを正しく理解し、素敵な人材との出会いに繋げていきましょう!
応募前職場見学は重要!
高卒採用におけるさまざまな採用活動のうち、「定番」とも言えるのが応募前職場見学。名前の通り、就職を希望する高校生が各企業への応募前に職場の見学を行うものです。高校生にとっては企業の「リアルな」姿を知るための、企業にとってはそれを高校生にアピールするための唯一のチャンスでもあるため、非常に重要です。
応募前職場見学とは
前述の通り、高校3年生が自身の就職希望先を決める参考材料とするため、候補となる企業を見学するのが応募前職場見学です。ここで各社の仕事内容や商品・サービス、社員の顔ぶれを含めた会社の雰囲気を直接見たり感じたりすることで、企業に対する理解を深めます。
しかし高校生の就活・採用は、まだ社会経験のない高校生を「守る」という観点から、企業が高校生に直接的なコンタクトを取ることが禁じられています。そのため、企業が自社を知ってもらえる機会は限られているのが現状で、その数少ないチャンスの一つが応募前職場見学というわけです。
ルールのうえでは実施は義務付けられていませんが、実態としては高卒採用を行うほとんどの企業が開催しています。実質上は必須だと考えたほうが良いでしょう。
職場見学の重要性
「企業と就職希望者がコミュニケーションを取れる機会が少ない」――これを高校生の立場で考えると、彼らは限られた情報の中から、人生における大きな決断を迫られるということです。そのため、この見学で「しっかり企業を見極めよう」という気持ちは非常に強くなりますし、先生方もそのように指導されます。
また企業側も、高校生たちとしっかりコミュニケーションを取ることが可能です。応募書類や面接だけでは知ることができない姿に触れることができるでしょう。
加えて、書類や面接は合否を決める材料でもあるため、どうしても「評価する」目線で見る必要があります。しかし応募前職場見学は、「応募前」というだけあって、そもそもその高校生が自社に応募してくるかどうかも分からない状況です。先入観のない状態で、より実態に即した形で相互理解を深めるためにも、うってつけの機会だと言えます。
応募前職場見学の基本
このように、非常に重要な応募前職場見学ですが、当然ながら漫然と行っていたのでは良い結果に繋がりません。いつ、何を、どのように実施するのが効果的なのでしょうか。
スケジュール
高卒採用は、通常6月にハローワークへの求人申し込みを行い、7月に求人票が公開されて本格的に採用活動が始まり、9月には選考と内定を行う短期決戦です。
このうち、応募前職場見学を行うのは学校が夏休みに入る7月末~8月末がメイン。業種にもよりますが、会社が稼働している平日で、かつ高校生の学業の妨げになりにくいことを考慮すると、必然的にこの時期になります。
具体的な開催日は、学校側から職場見学の希望があった際に、その都度両者で調整して決めるのが一般的です。ただ、多数の応募が見込まれる大企業を中心に、企業側があらかじめ日時を設定する場合もあります。日時を事前決定する場合は、学校に求人票を提出するタイミングで申告する必要がありますので、余裕を持ってスケジューリングしておくことも大切です。
企業は実際に何をすればいい?
やはり「職場見学」なだけあって、「その場でしか見られない、感じられない自社の魅力を知ってもらうこと」が中心となります。実際の現場や、先輩社員が働いている様子を見てもらいましょう。
ただ、流れ作業のように淡々と見学ツアーを組むだけではもったいないです。先輩社員との対談や、質疑応答の場を設けたりするのが良いでしょう。また、仕事現場やオフィス内の見学をしながら、自社商品に触れてもらうことや、それを作り出す喜びや楽しさを伝えることもできるはずです。
所要時間は1~1.5時間ほどであることが一般的。思った以上に短い時間ですので、要点を絞って無駄のないプログラムを組むようにしましょう。
職場見学の注意点
応募前職場見学でもっとも注意しないといけないのは、いくつかの禁止事項の存在です。
代表的なのは「選考活動をしてはいけない」というルール。「採用活動の一環なのに選考をしてはいけないの?」と思われるかもしれませんが、見学はあくまで見学。まだ実際に応募すらしていないという事実を忘れてはいけません。「入社したらどんなことを頑張りたい?」など、選考活動と見なされるような質問をすることも禁じられています。
また、職場見学の申込書類(職場見学のお願い・職場見学確認書)以外の書類、例えば個人情報が分かるものやアンケートなどの提出を求めることや、職場見学に参加したか否かを選考の判断基準にするのもルール違反です。
応募前職場見学のメリット・デメリット
高校生を採用するならぜひ実施したい応募前職場見学ですが、適切に行わなければかえってマイナスになってしまう可能性もあります。メリットとデメリットをしっかり把握して、自社に合ったスタンスでの開催を心がけてください。
メリット
ミスマッチを防ぎ、早期離職のリスクを下げられる可能性が高まる
高卒採用における課題の一つが、せっかく入社してくれた人材が早期離職してしまうことです。厚生労働省の調べによると、就職後3年以内の離職率は37.0%にも上ります(出典:「新規学卒者の離職状況 令和2年3月卒業者」厚生労働省)。3人に1人は3年以内に辞めてしまう計算です。どれだけたくさんの採用ができたとしても、結果として早期離職してしまうのであれば、採用や育成にかけたコストも無駄になってしまいます。
その大きな原因となっているのが、企業に対する理解(リサーチ)不足からくるミスマッチ。一般的に高校生は、まだ社会に出たことのない存在です。比較できるような経験もなく、その企業で働く自分の姿や、具体的な職務内容、会社の雰囲気をイメージしにくいのは仕方のないことです。仕事内容に惹かれて就職したものの、いざ働き出してみると「思っていたのと違う」と感じてしまう若者は少なくないようです。
例えば求人票に「職種:営業補助」と書かれていても、営業補助職が実際にどんな仕事をしているのかまでは分かりません。職場の雰囲気を「明るいです」とアピールしても、どんな雰囲気を「明るい」と解釈するかは人それぞれです。
しかし応募前職場見学を行えば、ふわっとしたイメージでしかなかったものが具体性を帯びてきます。「百聞は一見に如かず」という言葉もありますがまさにその通りで、実物を見てから判断するのと見ずに判断するのとでは大きく違います。応募前職場見学を行うことでより正しい形で、自社に対する理解を深めてもらえますし、納得して応募・入社できる可能性が高まるでしょう。
デメリット
準備などで時間と手間がかかる
まず、見学を実施することでそこに担当社員の手が取られます。その間、本来の業務は滞るわけで、生産性や作業効率が下がってしまうことは否めません。また、見学当日以前にも企画やプログラムを考えたり、見学の動線を決めたり、物品のセッティングをしたりなど、準備にかける時間も必要です。
そうした時間コストに対する費用対効果を意識せず、やみくもに開催していては無駄の多いものになってしまいます。あらかじめ「この時期には職場見学に手を取られる」と認識したうえで社内の年間スケジュールを決めるなど、先を見越した動きをしていきましょう。
場合によっては悪いイメージを与えてしまうおそれがある
職場見学は、会社の「リアル」を体験してもらえる場です。その反面、「あまり見られたくなった」要素が伝わってしまう場合もあるでしょう。例えば社内が散らかっていたり、社員の愛想が悪かったり。直接的に案内を担当する社員でなくても、挨拶がない、笑顔がない、元気や覇気がないといった様子は悪印象しか与えません。
高校生たちは「自分がこの会社で働く姿」を想像しながら見学しています。職場見学は単に「会社のことを説明する場」ではなく、常に“値踏み”されている審査の場だと思っておくくらいでちょうどいいです。
応募前職場見学から応募に繋げるポイント
応募前職場見学を実施するからには、当然そこから応募に繋げたいものです。高校生が応募したくなるのはどんな会社なのか意識して、「成果の出る」職場見学を成功させましょう。
目標を設定する
高卒採用は「一人一社制」が原則で、応募する企業は1社に絞り込まねばなりませんが、見学においてこの制限はありません。理屈のうえでは、本人が望めば何社でも見学できます。
データによると、就職を希望する高校生は平均して3社の見学に参加するそう。しかし最終的に応募するのは1社ですから、企業側の視点で見ると「3人の見学を受け入れて、1人が採用できる」という計算にもなります。その年の採用予定人数から逆算し、何人(何回)の見学を実施するのが望ましいのか、計画的に実施することが大切です。
会社一丸となって取り組む
高校生にとっては、「この仕事をやってみたい」と思うのと同じくらい、「この人たちと一緒に働いてみたい」という気持ちが大切です。したがって、案内を担当する社員以外も常に見られています。全社員に見学がある旨を周知し、笑顔で挨拶をする、いきいきと働いている姿を見せるなどを意識してもらいましょう。
また、職場見学に対応する社員は、役付きのベテラン社員よりも若手のほうが適任です。より高校生に近い目線や感性で接してくれるでしょう。もし同じ高校出身の社員がいるなら、高校生にもさらに親近感を抱いてもらいやすくなるはずです。
飾らず、等身大の自社を見せる
どうせ見学してもらうのであれば、自社をより良く見せたくなるのは分かります。しかし、見学に備えて“よそ行き”の姿をあつらえるのはあまりおすすめできません。例えば見学の日だけ掃除をする、仕事の楽しい面だけ見せようとするなどです。そのような形で採用することができても、結局はミスマッチや早期退職に繋がってしまいます。
激しく叱責をする上司の姿など、必要以上に生々しい部分を見せなくても良いですが、仕事のハードな面や、難しさなども伝えていくことは大切です。できるだけ等身大の姿を見せる意識を持ちましょう。
まとめ
このように、応募前職場見学は高卒採用の成功に欠かせないパーツとなっています。遠方からでも見学しやすくするため交通費を支給(地域によっては禁止)する企業や、オンラインで開催する企業も少なくありません。それだけ、各社ともここに力を入れているのです。「高卒採用は、企業と高校生の接点が極めて限定的」という前提に立ち返って、限られたチャンスを最大限に活かすようにしましょう。
ハリケンナビでは、合同企業説明会など、応募前職場見学以外での“架け橋”も定期的に開催しています。ぜひこれらもご活用いただき、より良い採用につなげてください。