高卒採用には、「一次募集」と「二次募集」が存在します。一次募集期間が終了した後に、継続あるいは追加で採用活動を行うのが二次募集です。一次募集だけでその年の採用計画が達成できれば問題ないのですが、うまくいかないこともあるでしょう。そのため、二次募集まで見据えた計画的な採用戦略が欠かせません。
高卒採用の二次募集とは?
そもそも、なぜ二次募集が存在するのでしょうか。一次募集とどんな違いがあるのでしょうか。まずは、高卒採用二次募集の基本を押さえておきましょう。
二次募集とは
行政・企業・学校のいわゆる「三者間ルール」に沿って、独自の慣習や決まりごとがある高卒採用。そのひとつが、採用スケジュールです。通常、7月から採用活動が解禁され9月には選考と内定を終える流れですが、これが「一次募集」に当たります。
しかし、そこで同年の採用シーズンが終わるわけではありません。一次募集で内定を得られなかった高校生もいれば、採用予定人数を充足できなかった企業もあるでしょう。その場合、引き続き就職活動・採用活動を行う必要があります。それが「二次募集」です。
また「内定が得られなかった」と言っても、必ずしもそれが本人の人材的魅力に起因するとは限りません。そのため、「まだこんな逸材が埋もれていたのか!」と思えるような、“残り福”との出会いも多いのが二次募集の魅力です。
二次募集の選考スケジュール
上述のように、9月には一次募集期間が終了します。高卒採用では、選考から1週間以内に合否の通達を行うことが推奨されているため、遅くとも10月の2週目くらいまでには高校生のもとに連絡が届いているでしょう。内定に至らなかった生徒は、この時点から再び企業を選んで応募する流れとなります。
企業もこのタイミングで二次募集活動に取り組むのが一般的ですが、一次募集がうまくいかなかったからといって、あわてて準備を始めたのでは遅いと考えるべきです。二次募集における採用活動は11月ごろがピークで、一次募集の終了から1カ月強しかありません。年間の採用計画を立てる際に、二次募集を行う可能性も想定しながら「二の矢、三の矢」として準備しておくことが大切です。
二次募集の就活状況
厚生労働省の取りまとめによると、令和5年9月の時点で高校新卒者(令和6年3月卒業)の就職内定率は63.0%。10年前と比べると約1.5倍にまで伸びましたが、ここ数年は同じような数値で推移しています。つまり、2次募集ではまだ約40%もの高校生が就職活動をしているという計算です。
ちなみに、二次募集のピークとなる11月が終わった時点での内定率も、例年ほぼ変わらず88%前後。年が明けて3月末で約99%となっています。高校生にとっても、もちろん企業にとっても、一次募集の成果が芳しくなかったからといって諦める必要はまったくないのです。
二次募集を受ける高校生の特徴
二次募集だからと言って、人材としての魅力に欠けるわけではないとお伝えしました。では、なぜ彼らは二次募集に回ることになったのでしょうか。二次募集に応募する高校生の特徴や傾向についてまとめます。
一次募集で内定をもらえなかった
まず挙げられるのは、一次募集に応募したものの残念ながら内定を得られなかった高校生です。しかし高卒採用には、1人の高校生が応募できるのは1社のみとする「一人一社制」ルールがあります。そのため、能力や資質が高いにも関わらず、たまたまその企業が求める人材像と合わなかっただけという事例も多いのです。
また、応募した企業の人気が高く、惜しくも選に漏れてしまったという場合もあるでしょう。大卒の採用市場では、より理想的な就職先を目指して、内定を得たあとも就活を続ける学生が少なくありません。しかし高卒採用は、学校からの推薦を基本としているため内定辞退は原則NG。企業側も辞退を見越して多めに内定を出すことをしないため、本来なら十分に採用レベルに達していたにも関わらず、鼻の差で涙を飲んだ高校生も多いのです。
部活動に打ち込んでいた
部活動に打ち込んでいたため十分な就職活動を行えなかった、あるいは一次募集への応募を見送ったという生徒もいます。
高卒採用の一次募集は、6月にハローワークへの申し込みが始まり、7月に採用活動が解禁、8月ごろに応募前職場見学などを実施して、9月に選考と内定……という流れです。高校生にとっても、7~8月ごろが就職活動の最盛期と言えるでしょう。
一方で高校の部活動は、高3の夏の大会を最後に引退するのが一般的。最後まで部活動をやりきりたい生徒にとっては、これが高卒採用のピークと完全に重なってしまうのです。
しかし、どんな部活動であれ、何かに情熱を注いで最後までやりきることができる姿勢は、むしろ社会人としても非常に魅力的な素養。主体性や継続性、忍耐力、目標達成意欲などに秀でた人材が多いことが期待できます。
進学や公務員試験から就職へと進路を変えた
次に考えられるのは、進路変更を行った高校生です。もともとは進学予定だったり、公務員試験を受ける予定だったりした生徒が、何らかの理由で就職へと方針転換し、二次募集の時点で就活を開始することがあります。こうした高校生たちの中にも思わぬ逸材が隠れていることが多いので、おおいに期待したいところです。
また、一概には言えませんが進学や公務員を希望する生徒は学業に強みを持っていることが多く、それも一つの人材的魅力になるでしょう。
二次募集のための準備
では、二次募集をするに当たって具体的に何をすれば良いのでしょうか。基本的には一次募集のときとやることは同じですが、二次募集だからこそ気を付けたい点もあります。ポイントは「自社が二次募集をしているのを知ってもらう」ことです。
高校訪問
まずは、一次募集と同様に高校訪問を行いましょう。ここで二次募集をしていることを伝えます。訪問する際は、求人票はもちろんですが、会社パンフレット、求人用パンフレットなどの採用サブツールを持参し、しっかり自社をアピールしましょう。このあたりも一次募集とやることは同じです。ただ、乗り遅れないためにも、一次募集の選考が終わると同時に、もしくはそれ以前に行うのが理想的です。
また、二次募集の高校訪問においては、情報の「発信」だけでなく「受信」も同じくらい大切にしてください。どんな生徒が、どのくらい二次募集の就活をしているかのリサーチを行うのです。
既に一次募集で就職希望の生徒が全員内定を得ている場合など、訪問を断られる場面もあるでしょうが、逆に自社に合いそうな人材をピンポイントで紹介してくれることもあります。
求人票送付
時間や地理的な問題で高校訪問が難しい場合は、せめて求人票の送付を行いましょう。一次募集のときに求人票を渡している学校でも、改めて送付してください。先生方も、一次募集の時点で大量に届いた求人票を再度ひもとき、二次募集を行っている企業を探し出すのは一苦労だからです。再送付すれば「自社が二次募集をしている」ことを知ってもらいやすくなります。
送付に当たっては、訪問の場合と同様、会社をアピールする資料を添えることも忘れずに。しかし先生方もお忙しいため、送った資料を開封してもらえない場合もあります。「これは二次募集の案内ですよ」と一目で分かるように、封筒に記載したりデザインを工夫するなどして、開封率を高めるひと手間を加えておくとベストです。
就活イベントの参加
高卒採用は、高校生本人ではなく学校の先生を窓口として行う形が基本です。そんな中で、本人と直接接することができる数少ないチャンスのひとつが就活イベント。合同企業説明会が代表的です。ハローワークが主催するものや、人材系の民間企業が開催するものがありますので、可能であれば自社ブースを出展してみましょう。
二次募集のポイントは「二次募集をしていると知ってもらうこと」だとご説明しましたが、逆に言えば、高校生もどの会社が二次募集をしているのか知らないということです。このようなイベントに参加することで直接的な告知や自社のアピールチャンスになるだけでなく、高校生にとっても大きなメリットになります。業界・業種の説明会や講演会、職業体験、インターンシップなどを実施する企業も多いです。
二次募集を成功させるためには?
先生の心理を理解する
この時期の先生方は、一次募集で内定を得られなかった生徒やこれから就活を始める生徒のために、何とか就職先を見つけてやりたい思いでいっぱいになります。しかしこのとき最も困るのが、そもそもどの企業が二次募集をしているのか分からないことです。
基本的に高校生たちは、一次募集の時点で興味のある会社を2~3社ピックアップしていますが、一人一社制もあって最終的に応募するのは1社です。その1社から内定を得られなかった場合、選んでいた他の企業にアタックしようと考えますが、二次募集を行っておらずまた一から企業探しをする場合も少なくありません。
中には、自ら企業にアプローチをかける熱心な先生もいらっしゃいますが、個人での情報収集には限界があります。だからこそ、このタイミングを見計らって「我が社は二次募集を行いますよ」とアピールすることが必要なのです。
スピードが命!
一次募集選考開始後直後に行う
一次募集で10月ごろまでに内定を得る生徒が約60%、二次募集がスタートして11月末までに内定を得る生徒が約88%だとご紹介しました。つまり、二次募集の情勢はあっという間に決してしまうということです。また、二次募集からは一人一社制の縛りがなくなり、複数の企業に応募できるようになります。機を逃さず他社との競争を勝ち抜くためにも、スピード感は何より大切です。
具体的には、一次募集の選考が始まると同じタイミングで、二次募集に向けた動きを始めておきましょう。ただし、すぐに動けるように準備自体はそれより前から進めておくことが大事です。募集状況が芳しくないからと、そのときになってあわてて動くことのないようにしておいてください。
求人票送付はFAXが早い!
スピード感を重視するのであれば、求人票をFAXで送るのも効果的です。各企業から大量に届く資料(求人票)に一つひとつ目を通すのは先生方も大変です。場合によっては、開封さえしてもらえないこともあります。より早く、より確実に自社の情報を届ける意味で、FAXは合理的だと言えるでしょう。
ただ一部には「FAXは文字が読み取りにくいので郵送のほうがありがたい」という先生方の声も聞かれます。一方的にFAXを送りつけて終わるのではなく、送信確認の意味も含めて学校に電話フォローができるとベターです。その際に、さらなるアピールや就職状況のヒアリングを行うこともできるでしょう。
まとめ
高卒採用の二次募集は、優れた人材を再発掘できる絶好の機会です。「一次募集で内定を得られなかった(=人材としての魅力が劣る)」というフィルターや先入観は取り払って臨みましょう。ただし短期決戦であり、一次募集の時点から、二次募集を行うことも見据えた計画的行動が欠かせません。自社の魅力や「自社が二次募集を行っていること」を、スピード感を持って学校や生徒たちに届ける必要があります。
ハリケンナビでは、合同企業説明会や企業と先生方を結ぶ名刺交換会、高校生が企業情報を検索できる情報サイトなど、さまざまな形で高卒採用の支援に取り組んでいます。二次募集成功のためにも、ぜひご活用ください。