「高卒採用者はすぐに辞めてしまう」とお悩みの方は多いかもしれません。しかし、それを本人のせいにするのは簡単ですが、それで事態は改善しないのも事実です。そこで当記事では、高卒人材はなぜ定着しにくいのか、どうすれば定着率が上がるのかを考えてみます。
高卒の早期離職の現状は?
そもそも、本当に高卒採用者の離職率は高いのでしょうか。一般に、就職した社員が3年以内に辞めてしまうことを「早期離職」と言いますが、大学新卒と比べ、高校新卒者はこの早期離職率が高い傾向にあります。
高卒と大卒との離職率の比較
厚生労働省が令和5年10月時点でとりまとめた調査によると、高校新卒者の早期離職率は37.0%。つまり、令和2年3月に卒業して就職した高校生のうち、3人に1人は既にその会社にいないという計算です。同じ調査で、大学新卒者の早期離職率は32.3%となっていることからも、高卒採用者のほうが早く辞めてしまう傾向があると言えるでしょう。
ちなみに早期離職率は、中学新卒者で52.9%、短大等新卒者で42.6%でした。高校新卒よりも短大等新卒のほうが高いのは意外な気もしますが、これは短大の学生に女性が多く、就職後の結婚・妊娠で早期離職する人が多かったためだと見られています。
早期離職率そのものは低下傾向
最近はあまり聞かれることは少なくなりましたが、かつて新卒採用界では頻繁に「七五三現象」という言葉を耳にしていました。早期離職率と学歴の関連性を揶揄した言葉で、中卒者の70%、高卒者の50%、大卒者の30%が3年以内に辞めてしまうというものです。
実際の高卒者の早期離職率は30%台ですから、50%というのはやや大げさな表現にも思えますが、実は以前はそうでもなかったのです。平成時代はほぼ毎年のように40%台後半を記録しており、平成15年(平成12年卒)のデータでは、50.3%を記録しています。一方で平成30年(平成27年卒)以降は40%を超えた年はありません。全体で見れば、高卒採用者の早期離職率は低下傾向にあると言えそうです。
また、早期離職率が最も高かった頃の世代も、今や40~50歳代。企業では中堅~ベテランどころです。「最近の」若い人は長続きしないという先入観をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ最近の若い人のほうが定着率は高いのです。
高卒の離職率が高い理由とは?
せっかく期待して雇用した人材がすぐに辞めてしまうのは、私たち企業側にとっても、社員本人にとっても不幸な結末です。そもそも、高卒人材の早期離職率はなぜ高いのでしょうか。
業界研究や企業理解が不足している
高卒採用の慣習・ルールによる弊害
高卒採用には、独自の慣習やルールが多く存在します。それらの多くは高校生を守るためであり、決して無意味なものではありませんが、負の側面があるのも事実です。中でも、離職率や定着率に影響を与えているのが「一人一社制」と「直接連絡の禁止」だと言われます。
一人一社制とは、1人の高校生が応募できるのは1社のみとするもの。「直接連絡の禁止」は、高校生へのコンタクトはすべて学校の先生を介する必要があるというものです。この影響で高校生は、多数の企業や業界を比較検討する、自分のやりたいことと本当に合致しているかを深く考える、より深く応募企業を理解するといったプロセスが不十分になりがちです。また、採用活動解禁から選考・内定まで3カ月弱という短い就活期間も、これに拍車をかけています。結果として、理解度や納得度が足りないまま就職してミスマッチを起こし、早期離職を引き起こしやすくなっているのです。
半年以内に辞めてしまう「超早期離職」も
ひとことで「早期離職(3年以内の離職)」といっても、3年で辞める人もいれば、1年もたたずに辞める人もいます。このうち、6カ月未満で辞めてしまうことを「超早期離職」といいますが、高卒人材はこの超早期離職が多いことも特徴です。リクルートワークス研究所の調べ(2020)では、「3カ月以上6カ月未満」での離職が11.2%、1カ月以上3カ月未満」が12.1%、「1カ月未満」が6.8%と、短大卒や大学卒と比べていずれも高くなる傾向が見られました。
実際のところ6カ月というのは、戦力になる・ならない以前の、ようやく仕事に慣れ始める時期です。この時期に辞めてしまうということは、よほどその会社が合わなかったと言えるでしょう。本来であれば、そうした内容は入社前に調べておくべきことです。しかし、上述した高卒採用独特の環境により、それらのリサーチや自己分析が不十分になっていた面もあるのは否めません。
会社そのものへの不満、想像とのギャップ
人間関係に馴染めなかった
平成30年に厚生労働省が実施した「若年者雇用実態調査」によると、高卒人材が「初めて勤務した会社を辞めた主な理由」の1位は「人間関係がよくなかった」(29.0%)でした。
「人間関係がよくない」と聞くと、厳しい上下関係やコミュニケーションの不足などがイメージされがちですが、必ずしもそればかりが要因とは限りません。現代の高卒人材が該当するいわゆる“Z世代”は、狭く深い人間関係を好み、プライバシーを重視する傾向が強いと言われます。会社に馴染んでもらうために良かれと思って行った言動でも、踏み込みすぎると重荷に感じてしまう可能性はありそうです。
労働条件が合わない
一般に離職理由として想像しやすいのは、労働時間や休日・休暇の条件に関するもの、賃金への不満などでしょう。調査では、それらも2位(28.7%)と3位(26.1%)にランクインしていました。
求人票に記載された内容と、実際の雇用条件・環境が異なっているのは論外ですが、高卒人材の場合「思っていたのと違っていた」というパターンが多いと推測できます。彼らはまだ社会経験がほとんどなく、他の仕事や会社と比較することもできません。そのため「月給○○万円」「週休2日」「残業は月10時間程度」といった条件を事前に確認し、問題ないと判断していても、いざ働き始めてみると思った以上に足りないと感じた、体力的な負担が大きかった……という場合もあるはずです。
仕事が自分に合わない
これも結局は「思っていたのと違う」パターンと言えます。そもそも、高校生に職務経験がないのは仕方のないことです。資料や説明会などで仕事内容は理解したつもりでも、あくまで想像の域を出ません。実際にやってみるのとは大きく違いますから、思いのほかやりがいを見出せなかったり、自分の適性に疑問を感じて自信を失ったりすることもあるでしょう。調査では、4位(22.2%)にランクインしていました。
また、「ノルマや責任が重すぎた」(12.4%)、「自分の技能・能力が活かせなかった」(4.8%)という声もあり、これも広義では「仕事が自分に合わない」と同類の理由だと捉えることができそうです。
人材の定着率を上げる3つのポイント
一人前になったとたん急に辞められてしまっては、人材投資の面からも大きな損失と言えます。どうすれば高卒人材に長く働いてもらえるのでしょうか。データからは、高校生の早期離職の原因は「人間関係」「労働環境」「仕事内容」でほとんどを占めていることが分かります。逆に考えれば、これらを改善できれば定着率を上げることは可能だと言えそうです。
高校生・企業間双方のミスマッチを防ぐ
労働条件や待遇など自社の現状を説明する
「リアリティショック」という言葉を聞かれたことはあるでしょうか。企業側が過度に自社を良く見せようとしたり、都合の悪い事実は隠したりすることで、入社後にギャップを感じショックを受けてしまう(結果として退職してしまう)現象です。いわゆる“5月病”もリアリティショックと同義だと言われます。
労働条件や待遇は求人票にも記載されていますが、説明会や職場見学会などの場で改めて口頭で説明したり、実際に働いている様子を見せるなどしてよく理解してもらうようにしましょう。
インターン等の実施
ミスマッチを防ぐためには、入社前に業務内容などを深く知ってもらう機会を作るのが効果的です。具体的にはインターンを実施してみると良いでしょう。応募前職場見学とは違って、実際の仕事を体験できるメリットは非常に大きいです。
インターンが難しければ、職場見学の際にできるだけリアルな現場を見せてあげてください。また、高卒採用で入社した若手社員との質疑応答など、自分(高校生)と近い立場の方と対話の場を設けるのもおすすめです。同じ高校の先輩であれば、さらにベターです。
ただし、ここでもリアリティショックには留意してください。“よそいき”を装ってしまっては本末転倒です。目先の応募は増えるかもしれませんが、結局はミスマッチのもと。等身大の自社を、いきいきと見せてあげてください。
気軽に相談できる環境を作る
社会に出たばかりの高卒人材にとって、会社の上司や先輩の輪の中に入っていくのは、強い緊張やプレッシャーを感じるものです。まずは彼らが打ち解けやすいよう、こちらから積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。
また、仕事を進めていく上での悩みや不安を汲み取ってあげることも大切です。上述したリクルートワークス研究所による超早期離職に関する調査でも、離職理由に「職場に相談できる人がおらず孤立していた」といった声が挙がっていました。
ただし「何でも相談して」と声をかけていても、「忙しそうで聞きづらい」という場合も往々にしてあります。そんなときは、定期的な1on1ミーティングを実施するなど「仕組み化」してしまうのが効果的でしょう。「話を聞いてもらえる」という安心感があるだけでもかなり違うはずです。企業側としても、離職の原因となる芽を早期に見つけ、対処できる可能性が高まります。
待遇や研修制度を見直す
給与や休日など、根本的な待遇を変えるのも一つの手です。高卒採用に限らず、既存社員の満足度を高める上でも効果的でしょう。しかし、経営的観点から現実的にはそれが難しい場合もあります。そのようなときは、人事考課や福利厚生だけでも見直してみませんか? 頑張りが正しく評価されて昇給や昇進に反映されたり、給与以外のサービスが受けられたりする環境があれば、仕事へのモチベーションも変わってくるはずです。
また、研修や人材育成の制度も見直してみましょう。超早期離職の多さから考えると、仕事に慣れる以前に辞めてしまう層が一定数いるのは明白です。つまり研修や育成の段階で「もうここでは働けない」と感じさせてしまったわけで、どこかに改善の余地があるはずです。
例えば近年は、同じやり方を全員に当てはめるのではなく、必要に応じて個別対応を用いるなどのアプローチが重視されています。メンター制度やバディ制度などを導入して、精神面も含めた身近さや手厚さを充実させるのも良いでしょう。
【まとめ】高卒採用にお困りの方は、ぜひハリケンナビへ!
高卒採用における早期離職の主な理由は、入社前の企業理解や業界理解の不足に起因していることがほとんどです。それがミスマッチを生み、会社への帰属意識や仕事へのモチベーションの低下、ひいては離職を引き起こします。つまり、採用前にいかに正しく深く自社のことを伝えられるかがカギです。
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